家電量販店にいた。さっきまで聴こえていた騒がしいBGMも店員さんの明るい掛け声も、眩しい照明も、涼やかな空気も、全部がわからなくなった。「メンバー4人」「ハマ・オカモト」「脱退」「今後」「道」「話し合い」「結果」、こんなに短い文章が読めない。あれ、私今どこにいるんだっけ。わからなかったけれど、「どうしたらいいの」というメッセージを友達2人に送った。泣きながら家に帰って、買い忘れたものがたくさんあったことに気づいた。
Xのタイムラインをどさどさ流れていく何かを見て、人間の状況把握能力と感情の処理能力の高さに驚いた。皆優秀だなあ。そんな間にも手元のティッシュがどんどんなくなっていく。頭が痛くなってきたけど、頭痛薬あったっけ。そうだ、明日のライヴ前に友達と行く居酒屋を調べておこう。インターネットにはなんでもあって助かる。そして、なんにもなくて困る。明日は晴れるといいなと思いながら天気予報のアプリを開く。
ハマ・オカモトさんがいないOKAMOTO'Sのホールツアー"90’S TOKYO BOYS IN HALL“Future Eve”"を観た。ハマくんが復帰してから始まった2024年の47都道府県ツアー"15th Anniversary FORTY SEVEN LIVE TOUR -RETURNS-"、翌年のアルバムツアー"LIVE TOUR 2025-2026 4EVER NOW"、どちらも誰かの気持ちは二の次に、彼らが自分の気持ちにだけに向き合える期間だといいと思っていて、だからInstagramでメンションをつけてメッセージを送るのも、アプリにコメントを残すのもやめていた(アルバムツアー宇都宮公演後に1回だけ送ったのはご愛嬌)。それっぽい綺麗な理由をつけたけれど、私の言葉が彼らの薬になるとは到底思えなかったから、やめた。OKAMOTO'Sが、そして大好きで大切で特別な人が再び歩き出すと決めた旅路が途切れませんように――それだけだった。今、やっと、彼らに向けて言葉を書く。私の持ちうる言葉でどう表現したらいいのかわからないけれど、ここに残す言葉が毒にも薬にもならないことを祈りながら。
会場に入ってステージに設置してあるベースアンプを見て、「ハマくんのじゃない、違う」と泣いた。こういうときに友達は放っておいてくれるから好きだ。昼の居酒屋では散々話したのに、ライヴが始まるまではほとんど話さなかった。SEが流れていなかったことに気づかなかった。
ハマくんがいないのに成り立つライヴに涙が止まらなかった。ロックバンドは遊びではないから、オカモトショウさんとオカモトコウキさんとオカモトレイジさん、ハミーさん、ブライアン新世界さんが成り立たせてくれているのはわかっているのに、誰よりもOKAMOTO'SがOKAMOTO'Sを所望していたでしょ?なんで?と思ってしまう。ハマくんがいないとやっぱり上手くいかないねって演奏を止めて、お願い。脱退なんて嘘に決まってんだろって笑い飛ばして。新曲はどのベースで弾くの。何を考えて弾くの。今日もかっこいいって言わせて。ねえ、ハマくん、どこにも行かないで。誰も悪くない。私だけが悪い。気を抜いたら立っていられなくなりそうだった。ほんとうは声を上げて泣きたかった。ああ、どこに焦点を合わせたらいいのかわからない。直感的に「この人のことを好きになるんだろうな」と思った13年前の春からずっとずっとずっと、自分でも呆れるくらいにハマくんのことばかり観てきたから、曲ごとに表情や視線、リズムの取り方、なんでもない仕草が蘇る。思い出す度にハマくんのことを好きだという気持ちの輪郭がはっきりする。その輪郭をなぞる度に、涙が出た。全身がカーッと熱くなった。<さよならじゃない/お別れをずっと探してる>――さよならがかたちになってしまうようなライヴがなくてよかった。けじめや区切りがあったら、ずるずる想うことはきっと悪になっていく。ハマくんがいないのに、私はハマくんのことだけを考えている。もっと好きになっている。人生を何度やり直しても、ハマくんのいる人生を選んで、この気持ちを味わうんだと思う。ハマくんがくれるすべてで、私は今も息をしている。
届いているか定かではないけれど、いつか「私はハマくんが選んできたすべてが正解だと思っているし、ハマくんが選んできたすべてが、そしてこれから選ぶすべてが正解になるよう味方でいたいと思っています」とメッセージを送った。ままならなくても、人生は続いていく。選ばなかったことは捨てたこととイコールじゃない。憶測でしかないけど、今回の選択はハマくんが初めて自分のためにした選択なんじゃないかと思った。私が見てきたハマくんは、他人がどう感じるか考えすぎてしまう、あまりに優しくて甘え下手で、責任感と自分の哲学をもっている人だから。そういうところが大好きで、大嫌い。1人で頑張れるフリをするハマくんの、頑張る理由になりたかった。
いいライヴだった。
"OKAMOTO'Sのハマ・オカモト"がいたこと、彼と彼が見せてくれるすべてに夢中だったことを覚えておきたいから、OKAMOTO'Sのライヴをこれからも観に行く。大好きで大切で特別な人、忘れてなんかやらない。3人を他意なく受け止めたり、不在をさみしがらなかったり、涙を流さなかったりするまでに時間は必要だけど、エゴを抱き締めたままだけど、追い掛ける。ハマくんを大切にしてくれた人を大切にしたい。そして、何よりもシンプルにハマくんが命を懸けて向き合ってきたOKAMOTO'Sを私が諦め切れないのだ。お返しもできていないし。どうか1日でも、1分でも、1秒でも長く、大好きなロックバンドの未来が、夢が続きますように。全部全部私のために。3人が、4人で見た夢を叶えてくれると信じている。だから絶望にも無理難題にも負けないで欲しい。
彼らの行き着く先がどこか知らないし、行き着いた先に何もなかったとしても、過去も現在も未来もすべて地続きで、血が通っている。それだけでいいと思う。何も終わっていない。物語は美しくなくても、正しくなくても問題ない。できる限り、一緒にいましょう。
夜の居酒屋で「なんで私の未来にハマ・オカモトはいないの」とこぼしたら、友達がほぼ同時に「え?いるよ」「勝手に消したの何?」と言う。感情がぐちゃぐちゃになって泣いてしまった。そうか、いるんだ。それならよかった。とはいえ、ギリギリ1人でも生きていけるよう私は仕組まれているので、お気になさらず。でも、悲しさを消化する方法を探す気も、折り合いをつける気もなくて、ごめんなさい。どこに行っても見つけて追いつく。たくさん想っている。真っ直ぐ好きなままでいる。だって、ハマくんだけなんだよ。
嘘のつけない純真な彼らへ、さみしさと希望に似た何かを添えた花束を。空が明るくなってきた。夏は朝が来るのが早いね。










